インターナショナル3Eカフェ (韓国 デジョン)

文責:胡蝶(韓国 ソルブリッジ大学)

近年、世界中の外交官や政治家、学者がコペンハーゲン会議に向けて気候変動や、環境、経済危機、エネルギー問題に関して会議を頻繁に開催している。しかしながら、最悪のシナリオを迎えるであろう2040年の時代を担っているのは、現時点の大人ではなく、我々若者の世代であることもまた事実である。

2009年8月、中国、日本および韓国から数名の若者が韓国デジョンに集い、環境問題や気候変動をテーマに会議を行った。さらに、ウズベキスタン、バングラディッシュからも1名ずつ若者が参加し、サポーターとして数名の大人も参加した。この会議では、環境問題が非常に複雑かつ多面的な要素の多い問題である現状を把握し、どのように解決策を模索していけるかを議論し合い、各々の観点から意見交換を行ったものである。また、気候や環境をテーマに若者らの間で協調し、目の前にある課題に取り組んでいけるように、アジア各国が同等の立場で具体的に会話を始めようとするものである。

日中韓の若者による会議開催に際して、日本からは3Ecafeプロジェクトチームのメンバーである熊谷現、佐藤千恵(筑波大学大学院 生命環境2年)、山本泰弘(筑波大学国際総合学類4年)の3名が韓国に渡航した。この会議はインターナショナル3Ecafeと名づけられ、韓国でも研究都市として知られているデードックイノポリスにて開催された。つくば市も研究学園都市であることが知られており、この点で韓国テジョンと日本つくばは似ている都市だと言える。

3 Eとは、Environment 環境・Energy エネルギー・Economy 経済を表しており、今後の未来構築にあたって、互いに関係し合う非常に重要なファクターである。3Ecafeプロジェクトチームは2年前につくばで発足し、学生、会社員、市民などつくば周辺に在住している人を中心に構成されている。活動は主に3Eカフェの開催である。3Eカフェとは、様々な人々が気軽な雰囲気の中、3Eをテーマに会話をし、どのようにすれば3Eに対して取り組んでいけるか、実際的なアイデアを考えたりする交流の場である。さらに、3Eカフェに参加した人自身が、社会の中で3Eのバランスを取るためにどのように貢献できるかを考え、実現可能な低炭素社会のイメージを持つようになることを期待している。これまでのところつくばでは、年数回の3Eカフェを開催してきた。3Eカフェのコンセプトは今回のインターナショナル3Ecafeにおいても踏襲しており、今回が第1回目の会議である。

2009年8月18日、ソルブリッジ大学(韓国 テジョン)の学生であるのHu Die(中国)、Ali Zulfiquar(バングラディッシュ)らが日本の学生らをデードックイノポリスに案内した。ソルブリッジ大学はビジネスのインターナショナルスクールで、活発な議論を通して現代の問題に迅速に対応できる人材育成を行っている。

学生らはまず、韓国エネルギー研究所(KIER)を訪問した。太陽光エネルギーや水素燃料などに関する研究の紹介を受け、エネルギー問題を取り組むためには実質的な技術の向上が必要不可欠であること等を学ぶことができた。その後、日本の学生らによる3Eカフェに関する短いプレゼンテーションが行われ、活発な論議がなされた。特にバングラデシュとウズベキスタンの学生による途上国目線の意見は、政府や企業、および社会に対して各々の国ごとに微妙な認識の違いがあること印象づけた。

その後、韓国生命工学研究所を訪問し、当研究所の研究者であるKwak博士と水環境や農業をテーマに議論を行った。Kwak博士はアジア地域の農業環境の分野で国境を越えて活動し、ネットワーク構築を行っている優れた研究者である。中国やモンゴル地域等の乾燥地などでも育つ、遺伝子組換えしたサツマイモの話題等を提供していただき、学生らは充実した時間を過ごすことができた。

今回のインターナショナル3Ecafeの開催と同時期に、韓国テジョンでは国連環境計画のTunzaコンファレンス2009(世界中から若者が集い、環境問題について議論する極めて大きな会議)が行われた。 これまで、Tunza会議ではChildren(12~15歳)とYouth(16~24歳)の2つのパートに分けて行われていたが、今年は次期コペンハーゲン会議を視野に入れて、今年は2つのグループは合併されていた。またTunza会議にて若者らは、「我々の声を聞いて」という声名を策定し、環境汚染に対して経済的にも厳しい規制を設けるよう訴えかけている(http://www.unep.org/PDF/PressReleases/Final_Youth_Statement.pdf 参照)。

さらに、夜にはデードックイノポリス本部2階の会議室にて、インターナショナル3Eカフェが開催された。中国からTunza会議に参加していた学生1名も加えて、様々な議論がなされた。今回のインターナショナル3Eカフェのゲストは、長年「持続可能な開発」を提唱し続けてきた、Richard Register氏だった。Ecocity Buildersの委員長であるRegister氏は、世界で初めてエコシティ構想を提唱し「エコシティ」という言葉を1970年代に作った人物である。その当時、彼はPaolo Soleriという、洞察力を持ち、持続可能なコミュニティ作りに向けて果敢に活動していたイタリア人とともに仕事をしていた。
まっすぐなグレイの髪で、ノーネクタイの青いシャツを身に着けたRegister氏は、エネルギーに満ち溢れた様子でスピーチをした。彼の多岐に渡るスピーチはシャープでありながら、かつ懐が深いものを感じさせるものであり、Register氏はすぐに聴衆を惹きつけていった。彼はその人生を、アメリカ人の都市空間に対する考え方をどうすれば変えられるか、という課題に費やしてきたのだ。そしてその結果、彼の主催するEcocity World Summitは注目を集めるまでに至った。そのサミットは12月にイスタンブールにて、世界中のエコシティプランナーが集まる初めてのプロジェクトとして開催される。

気候変動に関する議論は往々にして抽象的なものになるが、Register氏は具体的に、木々にあふれた車の無い都市のイメージを示し続けてきた。それは、新しい都市空間がどのように考案されうるか示したものだ。都市とは、生態系への影響が最も大きい人間活動である。彼は、人間由来の環境負荷の削減を考えるにあたり、そのような都市についてまず考え始めたのだ。

Register氏はその後、今の時代にエコシティを実現させるには、どのような段階を踏むべきであろうか、といったテーマについて、非常に緊張感があり、かつやさしさにあふれた雰囲気の中、3Ecafeの若いメンバーと議論を交わした。また、Register氏は芸術家気質の持ち主であり、多くの実現可能なエコシティのスケッチを私達に披露してくれた。

つくばから来た学生達も、山本と熊谷を中心として、彼らの日本での活動を説明した。彼らは自信に満ちた態度で、けれども丁寧に、彼らが様々な市民を集め、議論に参加させることができているという成功事例を紹介した。KAISTから参加した学生は、大学から始まった一種のエコビジネスプロジェクトについてプレゼンテーションを行った。彼らが紹介したのは、モノポリーに似たボードゲームを通じて、環境変動の意味合いをより直観的に理解する手助けとする、というアイデアだ。KAISTの学生の一人であるDong Hyun Kimは、イノベーションがもたらす気候変動への効果の重要性を強調していた。

このセミナーののち、全ての参加者の中に美しい思い出と3Eに関する深い思索を残して、4日間に渡る大田での3Ecafeは成功裏に幕を閉じた。
今回、会が成功裏に終わったことで、若者同士の国際協力の可能性が示されることとなった。これにより、3Ecafeの参加者は元気付けられ、またこのような取組みを何年間も続けていくための現実的な手段探しを切望するようになった。

日本のつくばから来た、3Ecafeチームの一人である熊谷現は、今回の参加者である中国、日本、韓国、そしてその他の国々から来た学生との間で親交を深めることができた事を喜んだ。「時間は短かった」と彼は言った。「けれど私達は、地球環境問題に関して、様々な国から集まった同志とのつながりを作る貴重な機会を得たと思います」。
「単純に、世界から集まった子ども達が各々の問題意識を表現しようと奮闘している姿を目の当たりにしたことで、世界中の若者がどれだけ熱烈に環境に対して関心を持っているか、という点についての正しい理解を得ることができました。これには勇気付けられましたね。またこれは、私達にとって、彼らの肉声や考え方を深いレベルで知る初めての機会でした。」

つくばの3Ecafeメンバーである佐藤千恵は、感想を次のように述べている。「今回の会議では、多くの子ども達が彼ら自身の力を知り、一方私達は彼らの主張を聞くことができました。子ども達の情熱を目の当たりにすることは、私にとって刺激的でした。会場を去るときには、『自分も何かしなくては』という気持ちにさせられました。」

中国出身のMBAコースの学生であり、3Ecafeに参加したMa Hongliangは次のように語った。「今回の3Ecafeは、私達が、教員とではなく普通の市民や子ども達、若者と各々の視点を共有する機会となりました。私達はそこで、彼らが3Eについて私達と同じくらい関心を持っている事を知りました。ですが、討論参加者の間では、実践的で現実的なアプローチにおいては差も見られました。私達も、実際に何か行動を起こしたいと思います。」

全体として、今回の会議は、各参加者が会って意見交換を行う機会を得ただけではなく、環境問題に対しての新しい気付きも得られたものであった。ある学生は、こう述べている。今回のディスカッションでは「少しだけだが、自分自身の世界に対するビジョンが変わった。これをもっと鮮明にしていきたい。」と

3EcafeとUNEP会議は終わってしまったが、心の中のつながりや、参加者同士で行う夜遅くのe-mailは続いている。筑波の代表学生たちは、国際的な対話を継続させるための方策の立案に余念がない。そして9月後半には、ビデオ会議が予定されている。
今後もしかすると、もっと多くの学生や市民、そして時には政策決定者や環境問題の専門家もこの議論に参加することになるかも知れない。